ポスチャーウォーキング協会

ポスチャーラボ ポスチャースタイリスト(R)のドクターや応援いただいている医学関係の方々から、専門家の目で見たポスチャーウォーキングの良さやその効果をより引き出す方法などをシリーズでお届けします。

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Vol.4 ポスチャーウォーキングのバイオメカニクス 北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学科 バイオメカニクス研究室 教授  山本 敬三
私はこれまで、スポーツ選手の動作分析に長く携わってきました。研究をすすめるうちに、個々選手の動作特徴の多くは、静止姿勢や歩行などの日常的な動作と関係していると思い、2008年から歩行動作の勉強をスタートしました。偶然にも日本の歩行研究の第一人者の講義を受ける機会があったことも私にとって幸運でした。私達にとって、歩行は自然な動作であっても、数ある動物の中で直立二足歩行をするのは人間だけです。歩行は、自然界から見ると稀有な動作なのです。私の研究室では、ポスチャーウォーキングのバイオメカニクス(運動力学)的な特徴について研究しています。スライドでは、KIMIKOと一般男性の歩行動作を比較しています。バイオメカニクス分析を行うことで、関節運動の特徴や筋活動量、その発揮タイミングなどが分かります。分析の結果、主に股関節と膝関節まわりの筋活動に独特な特徴が観察されました。一般歩行では、前足が接地した後に、少し膝を曲げ、太ももの前の筋肉(例:大腿四頭筋)を使って衝撃吸収を行いますが、ポスチャーウォーキングでは膝を曲げず、この衝撃吸収を膝まわりの筋肉では行いません。私は、中殿筋(股関節を外転させる筋肉、骨盤の外側にある)を使っていると考えています。また、立脚の後半(反対の足が接地する頃)には、太ももの後ろの筋肉(例:ハムストリングス)の活動量が増えています。一般歩行にはこのような特徴は見られません。つまり、日常生活ではあまり使用されない筋肉を選択的に活動させて歩いていると言えます。この観点から、ポスチャーウォーキングは「エキササイズ・ウォーキング」であると言えます。さらに、関節可動域(関節の運動範囲)の分析からは、股・膝・足関節ともに、歩行中の可動域が大きくなることが分かりました。このことは、エキササイズをしながら歩行(移動)し、しかもストレッチ効果もある可能性を示唆しています。まさに、一石三鳥の運動と言えます。進化の過程で、私達人類は長い年月をかけて現在の歩行スタイルを獲得してきました。学術的な調査から、人類は300万〜400万年前から二足歩行へ適応性を有していたと言われています。ポスチャーウォーキングは、現在の歩行スタイルにさらに磨きをかけ、歩行という移動手段に、美しさやエクササイズ・ストレッチ効果を付加したニュースタイルの歩行と言えるかもしれません。今後は、学問的な枠を超えてポスチャーウォーキングの効果について検証して行きます。
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北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学科バイオメカニクス研究室 教授山本 敬三
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